仙台高等裁判所 昭和31年(う)115号 判決
次に、職権を以て調査するに、原判決は被告人より相原貞三と連帯して金五万円を追徴する旨命じている。しかし、公職選挙に際し数人が共同して候補者の当選を目的とする金員の供与を受けた場合にその没収不能の利益を追徴するには各自の分配額に応じてこれを行うべきものであり(大審院判決・昭一〇・一・二九言渡参照)(共犯者数名ある場合各人に対しそれぞれ全額の追徴を命じ得る旨の昭三・二・三大判は関税法第八十三条の追徴に関するもので、本件に適切でない)、なお選挙人や選挙運動者に金員を供与したり饗応したりすべき旨の負担附で金員の供与を受けた場合には、その負担の趣旨に従つて支出された金額はこれを控除して追徴すべきものである。ところで、記録(特に第四冊、五九丁裏)に徴すれば、被告人は本件十万円中三万円を稲葉に選挙報酬としてやり、被告人、相原、稲葉の三人が選挙運動につき協議する会合の際の飲食費に四、五万円を使い、残りは被告人自身の選挙に関係のない会合用に使つたというのである。そして、被告人が相原と共に稲葉と飲食したのは稲葉を饗応する必要上から出たもので、被告人等の受けた利益ではないとみるのが相当であり、その飲食費合計を被告人の利益のために五万円と認めて、これと稲葉に供与した三万円を控除した残額二万円が、被告人自身の選挙に関係のない会合用に使つた金額で、結局被告人の受けた分配額は右二万円となり、相原のそれはないこととなる。されば、被告人から二万円を追徴すべきであるのに、相原と連帯して五万円を追徴した原判決は、公職選挙法第二百二十四条の解釈適用を誤つたもので、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明かであるというべきであり、この点においても原判決は破棄を免れない。
(裁判長裁判官 籠倉正治 裁判官 細野幸雄 裁判官 岡本二郎)